東京での本格的な正倉院展は1981年以来の38年ぶりということです。次回が38年後と考えれば、もうこの世にいる可能性はほぼゼロでです。今回行かざるを得ない。最近は同じように考えることが多いです。もう2度と来ることはないだろうとか、目にすることはないだろうって。
同じように考えたシニアが多かったと見え、いつもの東京国立博物館の特別展に比べて高齢の方の比率が高かったですね。奈良では毎年秋に短期間の展示がありますが関西地区以外からとなるとそんな簡単にはいけません。高齢であればなおさらです。
正倉院といえば日本の宝。教科書にも載っている螺鈿紫檀五絃琵琶や水瓶それにペルシアングラスなどは一生に一度は見ておきたいです。
これらの展示物はさすがというか保存状態の良さだけでなくそれぞれの美しさが際立っていたように思います。特に螺鈿紫檀五絃琵琶は近年精巧に模造された復元品とその状態があまり変わらないと思えるほどの状態の良さです。驚きです。写真は復元品です。
しかし、正倉院宝物は国宝ではないのです。今回の特別展に足を運ぶまで、僕はこの事実を知りませんでした。宮内庁管理で皇室に伝わる宝物という扱いで正倉院宝物と呼ばれます。普段は宮内庁の元で管理されています。ですから普段の展示はなしなのです。
1200年以上前のものですからこれからもずっと伝えてほしいし、こういった出し惜しみも保管のことを考えたら致し方がないのでしょう。
書き物の状態の良さも驚きでした。そして文字も美しい。前期に展示されていた正倉院宝物帳の几帳面な楷書の漢字は本当に美しかったです。後期展示では聖武天皇の自筆による監視の写し「雑集」。藤原不比等の三女による経典の写しも展示されていました。こういった歴史上のビックネームの自筆が残っているというのは感動的であるし、また誇らしくもあります。
日本では幸いに紙の文化財が結構残っていて平安時代の歌人の自筆などはさりげなく国立博物館の通常展示などでも見ることができます。それですら驚きですが、其れよりも数百年も前の手書きの資料がはるかに良い状態で保管されているというのは驚異的でそれを見るだけでも足を運んだ価値が十分以上にありました。
僕が日本の美術品にひかれるようになったのは50歳過ぎくらいからでしょうか。退職後は、日本人が残してきたものをゆっくり見て回りたいと思っています。日本人とは何なのか、いかにして今の日本につながっているのか。こういうことを知りたいという気持ちは、年とともに強くなっています。博物館や美術館に通うのはこういった気持ちが強いからだと思っているのです。
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